日常に寄り添い、ふふっと笑みがこぼれるお菓子を。「菓子工房ヌフフ」を訪ねてみた。
店舗を持たず、オンラインショップやマルシェへの出店を中心に、焼き菓子を届けている。今回は、店主の安藤様にお話をうかがった。
- 「新しさ」と「笑顔」を届ける、屋号に込めた決意
- コロナ禍で見出した、自分らしい働き方への転換
- 「生産者の顔」と「贈る人の心」を大切にする素材選び
- 誠実にお菓子と向き合い、しなやかに歩むこれから
①「新しさ」と「笑顔」を届ける、屋号に込めた決意
マルシェへの出店やオンライン販売を中心に、「菓子工房ヌフフ」として活動を続けている安藤さん。日常にそっと寄り添う焼き菓子を、一つひとつ丁寧に届けている。
まずは、この印象的な名前の由来について尋ねてみた。
「『neuf(ヌフ)』はフランス語で『新しい』や『出来立て』を意味する言葉です。以前働いていたお店が出来立てを大切にしていたので、その想いを自分の中でも大切にしたいと考えて、この言葉を選びました。」
その言葉に込めた想いは、さらに広がっていく。
「ヌフだけだと少しさみしく感じたので、食べた人が思わず『ふふっ』と笑顔になれるようなお店になったらいいなと思い、『f』を足してヌフフにしました。」
そこには、日常に寄り添うやさしさが込められている。
「日常の中で、ふとした瞬間に幸せを感じていただけるようなお菓子を届けられたら嬉しいです。」
「出来立て」と「笑顔」。その二つが重なり合い、このやわらかな響きの屋号が生まれた。何気ない日常に、そっと寄り添う存在でありたいという想いが感じられる。
②コロナ禍で見出した、自分らしい働き方への転換
安藤さんがお菓子づくりの道を志したきっかけは、幼少期の何気ない日常にあった。お母様が趣味で作っていたお菓子と、それを受け取った人が嬉しそうに笑う光景が、今も心に残っているという。
その想いはやがて目標となり、製菓専門学校へと進学。現場の厳しさを感じながらも、着実に技術を磨いていった。卒業後は、洋菓子店で経験を積み、さらに百貨店での販売にも携わるなど、「作ること」と「届けること」の両方に関わってきた。
そんな中で訪れたのが、コロナ禍という大きな転機だった。
「コロナ禍で新しい働き方が広がる中、私が働いていた百貨店も閉店することになりました。そうした変化の中で、販売員としてのこれからに不安を感じるようになっていきました。」
その中で、改めて自分の気持ちと向き合うことになる。
「お菓子に関わり続けたいという想いと、自分の手で作って届けたいという気持ちが強くなっていきました。」
最終的に独立を決意し、選んだのは「店舗を持たない」というスタイルだった。
「マルシェでの活動やオンラインでの販売であれば一人でも始められると思い、シェアキッチンを借りて、少しずつマルシェへの出店を始めました。」
自宅に工房を構え、少しずつ活動を広げていった安藤さん。店舗を持たないからこそ、届けたい人のもとへ向かえる。その選択には、無理のないかたちで続けていきたいという想いが込められている。
③「生産者の顔」と「贈る人の心」を大切にする素材選び
現在は製造からラッピング、販売までを一人で手がけている安藤さん。そのお菓子づくりの根底にあるのは、「素材へのまっすぐな向き合い方」だ。
「お店を始めようと思ったきっかけの一つが、自宅の近くにある養鶏所でした。新鮮な卵を見たときに、『これでお菓子を作りたい』と強く思ったんです。」
素材との出会いは、日々の暮らしの中から自然と広がっていく。
「マルシェで出会った生産者さんから直接仕入れるなど、できるだけ顔が見えるものを使いたいと考えています。今後はお菓子ごとに素材を使い分けながら、より自分らしい味わいを追求していけたらと思っています。」
一人で手がけているからこその柔軟さは、オーダーメイドにも活かされている。
「お客様のイメージに合わせた商品や装飾のご相談にも対応できるのが強みだと思っています。手軽さと特別感、その両方を大切にしています。」
その背景には、贈る人の気持ちに寄り添いたいという想いがある。
「お客様の想いを形にするお手伝いをしながら、日常のふとした瞬間に食べたくなったり、誰かに贈りたくなったりする存在になれたら嬉しいです。」
お菓子を通じて、人と人が少し近づく。そのやさしいつながりを大切にしながら、活動の幅は少しずつ広がっている。
④誠実にお菓子と向き合い、しなやかに歩むこれから
安藤さんが大切にしている言葉の一つに、「泥中の蓮」があるという。どんな環境の中でも、自分らしく美しく咲く。その姿に、自身のあり方を重ねている。
「習字を習っているのですが、その中で出会った、とても大切にしている言葉です。いろいろな経験をする中で、周りに流されず、自分に正直に生きていきたいと思うようになりました。」
独立後も、自分にできることを見極めながら、一歩ずつ丁寧に歩みを進めてきた安藤さん。規模を広げることよりも、お菓子一つひとつにしっかりと目を向け、お客様一人ひとりと向き合う時間を大切にしている。
「今後はマルシェとオンライン、それぞれの良さを活かしていきたいと考えています。」
その言葉の奥には、無理なく、自分らしく続けていきたいという想いがにじむ。
「いつか間借り喫茶のような形で、お菓子を楽しんでいただける場ができたらと思っていますが、自分のペースでやっていきたいです。」
何よりも大切にしているのは、お客様と笑い合える時間だという。
一宮市の小さな工房から生まれるお菓子は、今日もどこかで誰かの心をやさしくほどいている。日常の中で、ふと笑顔になりたい方は、ぜひ手に取ってみてほしい。きっと、あたたかな気持ちに包まれることだろう。
詳しい情報はこちら