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常滑市

モノクロで人生を写す「人と風の写真家abubu」を訪ねてみた。

モノクロで人生を写す「人と風の写真家abubu」を訪ねてみた。
JESSE <small>ジェシー</small>
JESSE ジェシー
メイ、モノクロ写真を撮るスタジオがあるんだって!
MEI <small>メイ</small>
MEI メイ
へぇ〜モノクロなの?なんだかこだわりを感じるわね。
JESSE <small>ジェシー</small>
JESSE ジェシー
色がないからこそ、人の気持ちとか雰囲気がしっかり残るんだってさ!
MEI <small>メイ</small>
MEI メイ
じゃあ、ジェシーの食いしん坊な顔も、モノクロなら少しは芸術っぽく見えるかもね。
この記事は約5分で読めます。
常滑市にある写真スタジオ「人と風の写真家abubu」をご存知だろうか。
モノクロフィルムで写真を撮影する、ちょっと珍しい写真スタジオだ。代表のよしあきらさんは、28歳で全く違う業界から写真の世界に飛び込み、3年後に独立。現在は「色のない世界」で人々の大切な瞬間を切り取り続けている。今回は、写真への想いや独特のスタイルについて詳しくお話を伺った。
今回のツムギポイント
  • 28歳で異業種から写真業界へ転身
  • 人生のリスタートが生んだ覚悟
  • モノクロフィルムに込められた想い
  • "ありのまま"を撮る写真哲学
  • 心の健康を大切にする生き方

①28歳で異業種から写真業界へ転身

 

「人と風の写真家abubu」は、モノクロで自然な温かみと家族の情景を捉えることをミッションとしている。この印象的な屋号について、オーナーのよしあきらさんはこう語る。

 

「人の息づかいと風の気配をひとつに。そんな写真を残したい思っています。“abubu”という名前は、響きの心地よさと、記憶に残る感覚を大切に考えました。人と自然、そのどちらにも寄り添うような存在でありたいと思ってこの名前にしました。」

 

よしあきらさんが写真業界に入ったのは28歳のとき。それまでは全く別の業界で働いていた。

 

「高校卒業後は工場に勤めたり、トラック運転手、新聞広告の配送など、さまざまな仕事をしていました。そのころは写真には全く興味がなく、カメラすら持っていませんでした。」

 

中学生の頃からカメラを趣味として楽しんでいたというよしあきらさん。しかし、就職してからは仕事に夢中になり、趣味に時間を割くことはなくなっていたそうだ。

 

そんなよしあきらさんが再び写真に向き合うきっかけとなったのは、営業職をしていたときだった。

 

「営業の世界では、どれだけ結果を出しても期末が終わればまたゼロからのスタートになります。形に残るわけではない。そうした環境で、この仕事を続けるべきかどうか自分に問いかけたとき、『自分にしかできないことを探したい』と思うようになったんです。」

 

形に残るものを求めてさまざまな職業を検討した中で、10代の頃に好きだった写真を思い出したのだ。趣味では続かなかったが、仕事にしたら写真に没頭できそうだと考えたよしあきらさんは、カメラマンへの転身を決意した。

 

②人生のリスタートが生んだ覚悟

 

写真業界への転身は、よしあきらさんにとって人生を大きく見直すきっかけとなった。28歳でカメラマンを志した頃、私生活でも変化があり、まさに新しい道へ踏み出すタイミングだったという。

 

複数の写真スタジオを受けても、年齢や経験の面で断られることが多かった。専門学校への進学も考えたが、そこでも年齢を理由に難色を示されることがあった。

 

「夢を後押ししてくれる場だと思っていたので、最初は驚きました。でも逆に『自分でやってみよう』と気持ちが固まったんです。」

 

そうした経験を経て、よしあきらさんはウェディング業界へ。さらに約3年の経験を積み、31歳で独立。フリーランスカメラマンとして、新しい人生を歩み始めた。

 

③モノクロフィルムに込められた想い

 

「人と風の写真家abubu」の最大の特徴は、フィルムを使ったモノクロ写真へのこだわりだ。この独特なスタイルには、よしあきらさんの深い想いが込められている。

 

「カラー写真は、光と色の余韻をそのまま閉じ込めて、瞬間の鮮やかさを教えてくれる。モノクロは、色に縛られず、そっと人の表情や空気を抱きしめる。時が経っても、静かに寄り添いながら、心に残る景色になるんです。

 

色をそぎ落とし、人の表情や雰囲気だけをやさしく残すモノクロの写真には、時間を超えて寄り添える力があるのかもしれない。モノクロ写真の魅力について、よしあきらさんはこう続ける。

 

「色のない世界は、今の自分、1年後の自分、10年後の自分で、その時の「自分の色」で写真を見ていけるんですよ。僕はその人に寄り添える写真を撮りたいんです。モノクロだとその人のその時の状態で見え方が変わるので、面白いんです。」

 

色がないことで想像力を掻き立て、見る人それぞれがその時の気持ちで写真を解釈できる。それがよしあきらさんの撮りたいものだという。

 

「情報を詰めすぎないというか、ただただ鏡だと思ってもらえればいい。今ここにいた時間をただただ切り取っているだけなんです。ずっと笑っていたらそういう写真になりますし、緊張して固まっていたらそういう写真になる。でもそれを否定するわけでも変えようとするわけでもありません。」

 

決して無理に笑わせようとしない。文字で言うなら「行間を想像する」ような、余白のある写真を心がけている。

 

④"ありのまま"を撮る写真哲学

 

よしあきらさんに写真へのこだわりを伺ってみた。

 

「写真とは、ただ形や色を記録するものではなく、目に見えない空気や、心の微かな揺らぎ をも映す手段だと僕は思っています。ありのままを撮るとは、飾らず、作らず、瞬間の呼吸や温もりをそのまま受け止め、そっ と手渡すこと。人が見せる笑顔やふとした仕草、風や光が溶け込むその一瞬⸺それは、たとえ何年経っ ても静かに胸に寄り添い、思い出を新しい形で呼び覚ましてくれるものです。写真の前に立つ人も、シャッターを押す僕も、誰もが自然体でいられる。そんな「ありのまま」の時間を、僕は大切にしています。」

 

最後に、よしあきらさんが日々大切にしていることを伺った。

 

「写真を通して人の家族の幸せを撮らせてもらうので、自分自身の気持ちもできるだけ落ち着いた状態にしておくようにしています。フラットな気持ちでいることを心掛けています。」

 

確かに、お客様からすれば気持ちが乱れているカメラマンに撮影してもらいたくないだろう。カメラマンの心境が写真に影響することを深く理解しているからこその言葉だといえるだろう。

 

人生の大きな転換点を乗り越え、自分なりの写真哲学を確立したよしあきらさん。彼が切り取るモノクロの世界には、色がないからこそ見える本当の姿がある。大切な人との時間を、ずっと寄り添っていける記憶として残したい人は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。

 

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