古着を介して環境問題へ貢献、古着の宝庫「PEACE TOWN VINTAGE」を訪ねてみた。





小さい子供から年配の方まで、ご家族、ご夫婦、学生と幅広い年齢層が訪れる、親しみやすい雰囲気の古着店だ。特にトラックジャケットなどのスポーツウェア系の品揃えは圧巻。今回はご夫婦で経営されている妻の中尾 沙耶香(なかお さやか)さんと夫の亮(あきら)さんに、お店を始めたきっかけや古着に対する想いを伺った。
- 店名に込められた想い
- 昔からの夢「経営がしたい」を追いかけて
- トラックジャケットは東海No.1の品揃え
- ご家族みんなが楽しめる古着店を目指して
- 古着を通じて環境を守る大切さを伝えたい
①店名に込められた想い
「PEACE TOWN VINTAGE」はレディース&キッズアイテムを含むヴィンテージアイテムを3000点以上取り扱っている倉庫のような外観が特徴的なお店だ。この店名には、2つの意味が込められている。1つは代表を務める沙耶香さんの生まれ育った町「平和町」を大事にしたいという想いから、そしてもう1つは、古着を通じた環境問題への貢献と、世界平和への願いだ。
お店を始める前は、実は個人でオーガニック野菜の農家をしていたという沙耶香さん。当時のことを振り返ってこう語る。
「以前から、古着の買い付けは行なっていたのですが、コロナ禍で海外渡航が難しくなってしまったんです。その時、コロナをきっかけに、世の中や環境問題に対していろいろ疑問が生まれて、少しでも世の中を良くしていきたいという思いから個人でオーガニック野菜の農家を始めました。」
沙耶香さんは社会問題に対する投げかけとオーガニック野菜の重要性をSNSで発信。それに共感する人たちが、野菜を直売所やオンラインで購入してくれていたという。コロナが収束して海外での古着の買い付けが可能になり、オンラインショップでの古着販売を再開。販売実績を積み重ね、ついに2024年11月に実店舗をオープンさせた。沙耶香さんは、古着も環境問題と密接に結びついていると考えている。
「日本では『環境問題のために古着を買う』という人はあまり多くはないと思うのですが、海外ではすごく一般的な考え方なんです。そういった意識をもった人がもっと増えていくといいな、と思っています。」
店舗は元々農業用倉庫として使っていた場所を改装。断熱工事やエアコン取り付けなど専門的な部分は業者に依頼しつつ、ラックやレジカウンターなどは手作りで仕上げた。木のぬくもりが感じられ、まさに二人の想いが詰まった温かい空間となっている。


②昔からの夢「経営がしたい」を追いかけて
沙耶香さんは学生時代から「経営がしたい」という夢を持ち続けてきた。そして卒業後も、自分の道を模索し、様々なことにチャレンジしてきた。沙耶香さんに当時の想いについて聞いてみた。
「実家は、父も母も祖父も教師で、比較的厳格なお家でした。でも私は小さい頃から冒険好きで縛られることなく好きなように生きたい、好きなように生きるには自営業で頑張るしかないと思っていました。やれることは何でもやってみようと色んなジャンルでトライアンドエラーを繰り返してきました。」
沙耶香さんは夢を叶えるため、留学や海外旅行など、様々な経験を積み重ねていった。そんな沙耶香さんが古着屋を開いたのは、亮さんとの結婚がきっかけだった。亮さんは10年アパレル業界で働いていた経験があり、洋服や店舗運営の深い知識を持っていた。沙耶香さんは元々一人で古着の買い付けとオンライン販売を行っており、結婚を機に、共同で店舗も展開することを決めたのだ。お互いの強みについて沙耶香さんはこう語る。
「私は広報が得意ですし、自由な経営がやりたいという想いがずっとありました。夫はとにかく洋服が大好きで、店舗運営の知識も豊富。お互いの得意分野で役割分担できるのが強みだと思っています。」
驚くことに、二人は家でもずっと仕事の話をしていると亮さんは言う。
「仕事中も、仕事が終わった後も、ご飯の時も、寝る前もずっと仕事の話を話していますね。二人の会話は9割仕事のことです。」
喧嘩にならないんですか?と質問をしたところ、亮さんからこんな答えが返ってきた。
「喧嘩より話し合いですね。プライベートでもほとんど喧嘩をすることはありません。」
続けて沙耶香さんが答える。
「お互いの意見がちょっとズレているときもあるんですけど、そのときは話し合っていますね。話し合いをしているうちに、全然違う結果になることもあります。」
互いの長所を活かし合い、Piece(ピース)を埋め合う、まさに理想的なビジネスパートナーといえる。
③トラックジャケットは東海No.1の品揃え
今後の戦略について尋ねたところ、地元を大切にしながらも、徐々にエリアを広げていきたいと、亮さんは意気込みを話してくれた。
「とりあえずは東海で広げていきたいですね。愛知、岐阜、三重…いろんなところで考えています。街中というよりは、車で行けるような場所で、大きめの店舗を考えていますね。」
PEACE TOWN VINTAGEの最大の特徴は、トラックジャケットなどのスポーツウェアに特化していることだと亮さんは語る。
「競合の大型店とも比較しましたが、トラックジャケットの在庫数は東海地区でナンバーワンだと自負しています。」
その在庫数は計り知れず、店頭に並んでいるものはごく一部だという。これだけの商品を集められるのは、オンラインショップを運営していた実績があるからこそだ。古着が近年人気なのは、昔の洋服は作りがしっかりしていた物が多かったことも関係していると亮さんが教えてくれた。
「最近は安く、壊れやすい大量生産・大量消費が多くなっています。それに対して昔の洋服は作りがしっかりしていて、長持ちしました。」
ただ洋服を集めるのではなく、手作業で一点ずつアイテムを厳選する、ハンドピックを強みとしている。デザイン・素材・ブランド価値などをチェックし、お客様が本当に必要としているアイテムを判断している。一括大量輸入とは異なり、シミ・ほつれ・黄ばみなどの細かい傷みを人的にチェックできるため、状態の良いアイテムだけが店頭に並ぶ。必要に応じてリペアも行っている。これも亮さんの長年の経験によるこだわりである。
「集められた古着の中には汚れていたり、ほつれていたりするものもあるので、内勤スタッフも雇って、できる限りお客様に良いコンディションでお渡しできるよう心がけています。ハンドピックの古着屋さんって、在庫数が少ないことが多いんです。でも、PEACE TOWN VINTAGEは数もかなりあるので、それも強みですね。」
この徹底したこだわりが、さまざまな顧客層から支持される理由の一つだろう。そして、もう一つの強みは「居心地の良さ」だと、沙耶香さんは語る。
「積極的に話しかけて売り込むというよりは、親しみを持ってもらえるように心がけています。リピーターのお客様には『また来てくださってありがとうございます』と声をかけたり。お客様が落ち着ける、第二のお家になればという思いがあります。」
Googleの口コミでも「店員さんが優しくて話しやすい」という声が寄せられ、高い評価を得ている。


④ご家族みんなが楽しめる古着店を目指して
PEACE TOWN VINTAGEの客層は、一般的な古着屋さんとは少し異なる。30~40代のファミリー層を中心に、幅広い年齢層が訪れるのが特徴だ。また、Instagramのフォロワーの約4割が女性というのも珍しい。沙耶香さんは女性の目線で選ぶことで、女性層からの支持が増えていると分析している。
「古着屋さんといえば、若い方や男性のお客様が多いイメージがあるかもしれませんが、うちは女性やファミリー層も多いんです。可愛いらしいアイテムやエレガントなアイテムも積極的に取り入れていますし、キッズアイテムも置いています。」
二人はそれぞれの分野でお店のさらなる発展を目指している。沙耶香さんは店を訪れる客層を知るために、地道なリサーチを行っている。
「レジでお会計の際に『普段どんなお洋服を着られますか?』『どんなアイテムがあったら嬉しいですか?』と通ってくださるお客様に直接ニーズを聞き、次回買い付けの参考にしています。オンラインの販売とは違いニーズが地域性で違うためヒアリングはしっかり行い、地域に合ったアイテムを強化していきたいです。」
亮さんは、より幅広い商品展開を目指している。
「ヴィンテージアイテムを求めて来てくださるお客様に、しっかり良いものを届けたいなと思っています。アメリカンビンテージや、ユーロだったり…まだまだ勉強中で、生涯勉強し続け、少しずつ充実させていきたいですね。」
今後はさらに品揃えを充実させ、特にヴィンテージアイテムを増やしていきたいとのことで、とても楽しみだ。
⑤古着を通じて環境を守る大切さを伝えたい
PEACE TOWN VINTAGEの最終的な目標について尋ねると、亮さんはこう答えてくれた。
「地元を拠点に大切にするつもりですが、オンラインでワールドワイドに発展させたいです。古着で環境保全をしていきたいという思いを世界に伝えられればいいなと思っています。」
二人が特に影響を受けたブランドの一つにパタゴニアがある。アウトドア衣料品、登山用品、サーフィン用品、スキー用品などを扱っており、環境保護への強い姿勢と高品質な製品で世界的に知られている。沙耶香さんが想い描く企業の理想像にも環境問題への想いが根付いている。
「パタゴニアが好きな人って、環境に対して想いがあって応援したいという意識で購入される方が多いんです。社会貢献し、応援されるような企業にしていきたいですね。」
スタッフにも恵まれ、順調そうに見える古着店の経営だが、まだまだ課題もあるという。亮さんは、より多彩な品揃えを目指して邁進している。
「ヴィンテージのアイテムを増やしていきたいし、見つけるための知識が足りていないと感じます。まだまだ勉強中です。」
沙耶香さんは、お店の在り方についてこう語る。
「PEACE TOWN VINTAGEという、私たちだけでなくスタッフみんなと作り上げたお店にファンがつくようにしたいです。古着屋は個人経営だと、オーナーやスタッフにファンが付くことが多いイメージですが、お店のファンになってもらうために、お店を始めたきっかけや目指す先をSNSで発信していく必要があると考えています。」
取材の最後に、お二人にとっての仕事とは何かを尋ねた。亮さんは多方面でのプロフェッショナルを目指している。
「先日、とても格好いい古着屋さんに出会いました。知識が豊富で、接客やビジネスの考え方もしっかりしている。人として、バイヤーとして格好いい。私もそのようなプロフェッショナルを目指したい。」
続けて沙耶香さんが答えてくれた。
「私たちは一人で生きているのではなく、お互いに影響し合っています。環境の問題は、決して他人事ではなく私たちの行動一つ一つが、未来の自分や地球に影響を与えます。だから私は目の前の人も物も大切にしたいと思っていますし、そのことを古着を通じてこれからを担う若者に伝えていきたいです。」
沙耶香さんの原動力は環境問題への深い想いなのだ。
古着を通じて世界にPEACEを届けたいという夢を抱くPEACE TOWN VINTAGE。沙耶香さんと亮さんの温かい人柄と、古着への深い愛情、そして何よりもつながりを大切に思う気持ちが、素敵な空間を作り上げている。
古着が大好きな人も、これまであまり古着に触れて来なかった人も、ぜひ一度家族や友人と訪れてみてはいかがだろうか。

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