一度きりの人生を、甘く、可愛く、スイーツで彩る「洋菓子店SWEET BUNNY」を訪ねてみた。





可愛らしいウサギのキャラクターが目印の、こだわりのオーダーメイドケーキが自慢のお店だ。今回はオーナーパティシエの渡邊 真裕華(わたなべ まゆか)さんに、お店への想いや、人生を変えた様々な経験について伺った。
- 幼い頃からの夢を追いかけて
- 多くの応援で形になったお店 夢をのせた第一歩
- 「可愛い、美味しい、身体に優しい」を届ける
- 多様な層に支持される、SWEET BUNNYの世界観
①幼い頃からの夢を追いかけて
渡邊さんは、幼い頃から漠然とケーキ屋さんになりたいという夢を抱いていた。
「中学生のころ、ケーキビュッフェが一大ブームになったことがありました。それをきっかけに、お菓子そのものへの興味がぐんと高まり、家でもお菓子作りをするようになりました。夢中になって作るうちに、『この道で生きていきたい』と思うようになり、進路を決めるタイミングで迷わずお菓子の道を選びました。」
製菓専門学校では、技術や衛生について基礎から応用までをしっかりと習得。その後は愛知県内のホテルでパティシエとして3年間勤務した。
「そこでは、ウェディングケーキを任せてもらったり、デザートビュッフェを担当したりと、本当に幅広い仕事を経験させてもらいました。振り返ると、とても濃い時間だったと思います。いろいろな素材や技法に触れられたことは、今のお店でメニューを考えるうえでもしっかり活きています。あの環境にいられたことは、自分にとって本当にありがたい経験でした。」
しかし、そんな日々にも突然の転機が訪れる。勤務していたホテルが閉店してしまったのだ。もちろん別の店でパティシエを続けるという選択肢もあった。だが、「一度違うことを経験してみたい」という思いが強まり、渡邊さんは意外な方向に舵を切る。当時22歳、新たな挑戦を始めることにしたのだった。
「今しかできないことに挑戦したいと思ったんです。まずは小さな一歩から始めました。」
新たな活動を続けるなかで、「お菓子を食べてみたい」「販売してほしい」といった声が届くようになった。そうした声に背中を押される形で、お菓子作りを再開。
ちょうどコロナ禍で「おうちで楽しむ」需要が高まっていたタイミングとも重なり、2020年12月、オンラインストア「SWEET BUNNY」を立ち上げた。レンタルキッチンを活用しながら焼き菓子や冷凍スイーツの製造・販売を始めると、北海道から沖縄まで、少しずつ全国各地からの注文が届くようになっていった。
オンラインストアが軌道に乗り始めた頃、渡邊さんの中で「実店舗」という言葉が現実味を帯びてきた。もともと、いつかは自分のお店を持ちたいという夢を抱いていたが、同時にそのリスクの大きさも理解していた。迷いの中で一歩を踏み出す決め手となったのは、やはりパティシエとしての強い想いだった。
「オンラインでは販売できるものが限られるんです。私はパティシエとして、今まで生ケーキを考えて、つくってきた経験があります。今まで改良してきたレシピを、このまま世に出さずに終わるのはもったいないかも、自分の財産として積み上げたケーキを多くの人に届けたいと思ったんです。」
実店舗であれば、生ケーキなどオンラインでは難しかった商品も届けられる。「パティシエの経験を活かしたい」という気持ちが、リスクを超えて実店舗開業へと踏み出す原動力となった。


②多くの応援で形になったお店 夢をのせた第一歩
実店舗の開業にあたっては、内装工事や厨房機器の準備など、避けられない初期費用がのしかかった。外装や内装、厨房機器の多くは自己資金で賄い、必要に応じて中古品も活用する計画だった。しかし、使用頻度の高いオーブンや冷蔵・冷凍庫、そしてケーキを並べるために欠かせない高湿ショーケースは、中古市場ではほとんど見つからず、新品の導入を余儀なくされた。そのため、どうしても自己資金だけでは補えない部分が生じてしまった。
不足分の資金を補うため、またオープン前からより多くの人に店の存在を知ってもらう機会として、クラウドファンディングを実施することを決意。プロジェクトは目標を大幅に上回る支援をいただき、大成功を収めることができた。集まった資金は、主にオーブンやショーケースといった設備費の一部や、パッケージ・オリジナル紅茶の製作費、デザイン費、送料・梱包費に充てられた。
限られた予算の中で、自ら工夫を重ね、できるだけ費用を抑える努力も続けた。家族や友人、そして温かい声援を送ってくれた多くの人々の支えが積み重なり、店はようやく現実のかたちとなった。
「開業にあたって不安も大きかったですが、応援してくださる方の存在が本当に力になりました。」
周囲の温かい支えに背中を押され、渡邊さんは自身のケーキを届ける舞台へと一歩を踏み出したのだった。

③「可愛い、美味しい、身体に優しい」を届ける
SWEET BUNNYが掲げるコンセプトは、「可愛い」「美味しい」「身体に優しい」の3つ。その中でも特に「身体に優しい」という部分には、渡邊さん自身の強いこだわりがにじむ。保存料やショートニングを使わず、きび砂糖や米粉を取り入れたグルテンフリーのお菓子づくりに取り組むなど、素材選びと製法に工夫を重ねてきた。
「ただ、グルテンフリー商品専門店だと選択肢が限られてしまうので、あくまで“選べる一つ”としてグルテンフリーを取り扱っています。」
決して構えすぎず、日々の暮らしの中で安心して楽しめるスイーツを届けたい。そんな思いが、SWEET BUNNYの土台をつくっている。
オンラインストアではこれまで、焼き菓子やバターサンド、マカロン、チーズケーキ、カヌレなど、配送に適した商品を中心に展開してきた。実店舗の開業により、これまで叶わなかった“生ケーキ”の提供が可能になったことは大きな転機となった。
基本的に製造はすべて渡邊さん一人。多くの種類を一度に作ることはできないが、その分、一つ一つのケーキと丁寧に向き合い、クオリティの高い仕上がりを目指している。
「お客様にあわせてオーダーメイドのケーキもお作りしています。価格のベースはありますが、ショートケーキひとつとっても、上に乗せるフルーツや飾りまで細かくオーダーできる。世界にひとつだけのケーキを作れるのは、SWEET BUNNYならではの強みだと思います。」
コンセプトのひとつである「可愛い」もまた、SWEET BUNNYを語る上で欠かせない要素だ。ロゴやパッケージ、ケーキピックやチョコプレートに描かれているのは、渡邊さんが大好きな“うさぎ”をモチーフにしたオリジナルキャラクター。クッキー缶やギフトボックスにいたるまで、世界観を統一したデザインでまとめられている。
ケーキそのものにも「可愛い」は詰まっている。うさぎモチーフのケーキや、ハート型のケーキなど、ビジュアルにとことんこだわり抜いたラインナップは、可愛いものが好きな人の心をとらえて離さない。細部に宿るそのこだわりが、SWEET BUNNYのコンセプトを確かなものとしている。


④多様な層に支持される、SWEET BUNNYの世界観
可愛らしい世界観が印象的なSWEET BUNNY。女性を中心としたお客さまが多いのかと思いきや、実際には年齢や性別を問わず、幅広い層の人々が訪れているという。家族へのお土産やプレゼント用にと、一人でふらりと来店する男性の姿もある。中には、毎週のようにケーキを買いに来る常連さんもおり、SWEET BUNNYは確実にその支持を広げている。
「ブランドとしてもっと知名度を高めていきたいですね。『可愛いものが好き』という方に、SWEET BUNNYの存在をもっと届けていきたいです。こんなに可愛いのがあるよって、たくさんの人に知ってほしいんです。」
うさぎをモチーフにしたロゴやパッケージ、店内のデザインなど、ブランド全体に統一感を持たせることで、「このキャラクターといえばSWEET BUNNY」と認識してもらえるような存在を目指している。
今後の展望について尋ねてみた。
「多店舗展開やカフェのような業態を広げていくことよりも、まずは自分がケーキ作りにしっかりと向き合える体制を整えたいと思っています。製造や販売を担うスタッフを迎え、定休日を設けずに安定した運営ができるような仕組みづくりが理想ですね。」
そんな渡邊さんの胸にあるのは、「人生は一度きり」という言葉。
「10代から20代前半の時間の使い方を、実は後悔してるんです。だからこそ今は、もう1秒たりとも無駄にしたくない。やりたいことは全部やり切りたいと思っています。」
パティシエとして、そして一人の女性として、自分の興味や夢を妥協せずに追いかけ続ける渡邊さん。その生き方はまさに「一度きりの人生を楽しむ」姿勢そのものだ。
こだわり抜いた素材とデザインで、「可愛い」と「おいしい」を届ける洋菓子店、SWEET BUNNY。実店舗はもちろん、オンラインストアや「わくわく広場」の中日ビル店・セントラルパーク店・イオンタウン名西店などで委託販売も行っている。これからもきっと、渡邊さんの手から生まれるお菓子が、誰かの笑顔と日常の楽しみをそっと支えてくれるはずだ。

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