元看護師のオーナーが手掛ける素材にこだわるスコーン屋「Spontane.」を訪ねてみた。





2024年2月にオープンしたこのお店では、素材にこだわったスコーンを提供している。今回は元看護師でもあるオーナーの青木みなみ(あおきみなみ)さんに、素材へのこだわりやお店に対する想いを伺った。
- 看護師からスコーン専門店のオーナーへ
- 健康のプロが作る「体に優しい」スコーン
- お客様との絆、リピーターが支えるお店
- 家族との時間を大切に、ワークライフバランスを実現
- ふるさと納税にも意欲、扶桑町の活性化へ
①看護師からスコーン専門店のオーナーへ
青木さんは幼い頃からお菓子作りが好きだったこともあり、パティシエになることを夢見ていた。しかし、周囲からの影響もあり、看護師の道を選び、約10年間看護師として、病院や企業、行政など様々な分野で活躍してきた。
「看護師の仕事も好きで楽しかったのですが、結婚して子育てをしていく中で、自分の表現したいことや、やりたいこととは違うかも、と感じるようになりました。」
仕事と家庭の両立の難しさを感じていた時、子どもたちの就学を機に扶桑町に引っ越してきた。そこで目にしたのは、長年シャッターが下りたままの状態となっていた祖母が所有する空き店舗だった。
「このお店を見てなんだか悲しくなったんです。なので、私が再生させたいと思いました。その頃、私自身も変わりたいと考えていたタイミングだったので、チャレンジすることにしました。」
自分のやりたいことを形にしたいという気持ちから、スコーン専門店をオープンすることを決意する。実際に動き出したのは、構想から約3年が経った2023年初頭からだった。不要品の処分や改修工事、2階の畳をフローリングに張り替えるなどのDIY作業を行った。そして歴史も感じられるこだわりのスコーン専門店が開店したのだ。


②健康のプロが作る「体に優しい」スコーン
店名の「Spontane.」(スポンタネ)は、フランス語で「ありのまま」「素直」「優しい」という意味。その名の通り、シンプルで温かみのあるスコーンと、居心地の良い空間が評判を呼んでいる。
「看護師として勤務していた約10年間、心の健康と体の健康に向き合ってきました。その経験を活かしたお菓子作りはうちの強みになっています。」
そう語る青木さんは、看護師の経験を活かし、「ウェルビーイングなスコーン屋」を目指す。ウェルビーイングとは、WHO(世界保健機関)でも使われる医療用語で、肉体的・精神的・社会的に良好な状態を指す。
「心を満たして体が喜ぶ、体を満たして心が喜ぶ、そういうスコーン屋さんにしていきたいです。」
そんな想いもあり、特に素材選びにこだわっているという。一般的なスコーンではバターが必須だが、Spontane.のスコーンはバター不使用。これには理由がある。
「バターを使うとどうしてもバターの味になってしまいます。うちは北海道産のスペルト小麦という小麦を使っていて、それ自体が本当に香ばしくて香り高いんです。その香りや味を感じてほしいので、バターではなく小麦を主役にしたスコーンにしています。」
生クリームも国産品を使用するなど、素材の質と産地も重視。商品は常時9種類を用意し、そのうち1つは日替わりで変化をつけている。プレーンの「スポンタネスコーン」が最も人気があり、「素材本来の味が伝わるスコーンが一番人気というのは作り手としても嬉しい」と青木さんは笑顔を見せる。
③お客様との絆、リピーターが支えるお店
Spontane.のスコーンは、体のことを考えて食べるものを選ぶ妊婦さんや、シンプルで良質な素材のお菓子を子どもに食べさせたいと考えるお母様たちから特に支持を得ている。
「お客様の8割ぐらいが妊婦さんや就学前の小さいお子さんをもつお母様なんです。リピーターさんも多く、本当に嬉しいです。お客様を10と考えた時、商品のファンが6割、お店のファンが3割、私と話すために来ていただける方が1割と想定しています。お客様と話す時間も大切にしていて、いろんな知識を教えてもらっています。」
青木さんは「20代から60代のプレゼント上級者の男女」をお客様として想定していた。実際に、自分用だけでなく、友達や家族へのプレゼントとして購入されるお客様も多いという。青木さんがそう考えたきっかけも、看護師時代の経験からきている。
「看護師ってグルメな人が多くて、プレゼントにこだわりがある方が多いんです。ヘルシーで体に良い上に、美味しいものを探すのは難しいんです。そういったものをお求めのお客様にはぴったりなスコーンだと思っています。」
最近は男性のお客様も徐々に増えており、在宅勤務の息抜きに訪れるお客様や、取引先への手土産として購入されるお客様なども来店されるようだ。
Instagramでも積極的に情報発信を行っており、それを見て来店されるお客様も多い。青木さんはInstagram上で三部作のストーリーを公開するなど、ターゲット層に響くコンテンツ制作にも力を入れている。ぜひSpontane.が紡ぐ、優しさあふれる物語を読んでみてほしい。
④家族との時間を大切に、ワークライフバランスを実現
こだわりいっぱいのお店について明るく語る青木さんだが、看護師から自営業への転身には不安もあったという。しかし、家族との時間をもっと大切にしたいという気持ちが強かった青木さん。
「看護師はやはり安定した職業ですからね。私が思い切って行動に移せたのは家族の存在が大きいです。自営業だと、子どもの送り迎えや行事のために時間の調整も自分で自由にできるので、家族の時間も大事にできるし、仕事をおろそかにすることもなく、両立できることが魅力的でした。」
夫の理解と協力があったからこそ、新しいことに挑戦できたと青木さんは語る。現在の営業時間は、子どもたちの生活リズムに合わせて設定。将来的に子どもたちが大きくなれば、営業時間の変更も検討しているという。
「プライベートでは昔から旅行が好きでした。これからも、いろいろなところを旅行して、いろいろなものを食べて、その体験をスコーン作りに活かしていきたいですね。」
青木さんは目を輝かせながらそう語る。家族の支えもあって生まれた青木さんのスコーンだからこそ、多くのお客様から愛されているのかもしれない。
⑤ふるさと納税にも意欲、扶桑町の活性化へ
2024年はマルシェなどの出店はせず、店頭での販売に集中してきた青木さん。
「やはり、店頭で顔を見て渡したかったんです。今はインスタでしか宣伝していないので、事前にある程度うちを知った状態で来てくれるお客様がほとんどです。マルシェ出店に興味はありますが、うちを知らないお客様も多いと考えると、正直不安だったので、今までは店頭販売のみでした。」
しかし、2025年からはマルシェ出店や、扶桑町からオファーがあったふるさと納税の返礼品としての提供など、販路拡大も視野に入れており、今後の商品展開についても柔軟に考えている。
「今の形態が完成ではなく、今後、自分の状態やお客様のニーズに合わせて変わっていく可能性はあります。お客様が喜んでくれることが目的なので、スコーンの販売以外でも、いろいろな方法を模索していきたいです。」
お客様の喜ぶ顔を見ることが、青木さんの原動力なのだ。
スコーン専門店という新しい挑戦を通して、青木さんは扶桑町の活性化にも一役買っている。地域に根ざし、人々の健康と幸せに貢献し続ける彼女の姿勢は、多くの人に勇気と希望を与えている。Spontane.から広がる「ウェルビーイング」の輪は、これからも扶桑町を中心に広がっていくだろう。
大切な人へのプレゼント選びに迷ったときは、ぜひ訪れてみてほしい。

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