ニッチなものづくりで世界のトップを目指す髙藏工業株式会社を訪ねてみた。





1939年に創業された、オーダーメイド工業用砥石の専門メーカーだ。工業用砥石というニッチな分野で、世界18カ国以上への輸出を実現するまでに成長している。今回は代表取締役の髙橋 保雄(たかはし やすお)さんに、コロナ禍をチャンスに変えた経営戦略や、組織づくりの秘訣などたくさんお話を伺った。
- コロナを追い風に変えた海外戦略
- 顧客に寄り添う姿勢と高い品質
- 多様性を重視した組織づくり
- 1年目にも役割や権限を与える
- 「素直さ」と「前向き」を大切に
①コロナを追い風に変えた海外戦略
創業86年の髙藏工業株式会社。その歴史の中で培われた確かな技術と実績を基に、医療用注射針から自動車部品まで、さまざまな産業分野を支える砥石を製造している。社名の由来はかつて会社があった高蔵寺(こうぞうじ)駅近くの「高座山(たかくらやま)」から取られているそうだ。
髙橋社長が社長に就任したのは2020年。ちょうどコロナ禍の時期だった。しかし、リーマンショックの経験から「10年に一度は何かしらのショックが来るだろう」と予想していたこともあり、大きな不安はなかったという。むしろ、その状況を前向きにとらえ、「その時に何をやるのか」というプラスの発想で臨んだのだ。
コロナ禍で人との接触が制限される中、髙藏工業が選んだ戦略は2つある。1つは社内での技術力強化、もう1つはオンラインを活用した営業だ。
「今できることは何かと考えた時に、コロナの影響で人は海外に行けないけど、物は海外に行けると考えました。」
そう考えた髙橋社長。さっそく英語が堪能で海外経験が豊富な人材を採用し、在宅勤務での営業体制を整備した。インターネットで海外企業を探し、パイプをつなぎ、オンラインで商談を進める。通訳がいることでスムーズに話が進み、サンプルを送る形で新規顧客を開拓していった。
「オンラインなら、距離は関係なくなります。隣の人と話をするように、ヨーロッパの人とも話せるんですよ。」
その結果、以前はアジア圏が中心だった輸出先が、ドイツやイタリアなどヨーロッパにも広がったのだ。そして、世界18カ国以上にまで販路が拡大されたのだ。

②顧客に寄り添う姿勢と高い品質
砥石業界のトップを目指す髙藏工業。最大の強みは「オーダーメイド」だ。売上の8割以上が受注生産で、一品一品お客様のニーズに合わせた製品を作っている。
同社では、顧客から「これを削りたい」という要望があった場合、そのワークを借りてきて社内で研削テストを行い評価している。これにより、顧客に近い状況でテストを行い、結果を顧客に提示することが可能になるのだ。
「テストをお客様任せにせず、私たちがテストすることで、お客様の手間をできるだけ省いています。AとBのどちらが良いかなど、具体的な提案をするよう心がけています。大手企業が同じことをやるケースはありますが、私たちのような規模の企業では、珍しい取り組みなんです。」
もちろん、最終的なテストは顧客が実施する。しかし砥石に精通した技術者が社内でテストを行うことで、より顧客のニーズに合わせた、最適な解決策を導ける効果が期待できるのだ。
また「世界に誇れる技術力」も強みだ。特に注射針の針先を研ぐ砥石は世界的に高い評価を得ている。注射針の品質は、砥石によって決まるといっても過言ではない。もし注射針の断面が少しでもギザギザしていたり、バリ(削りかす)があったりしたらどうだろうか。医療行為を受ける際、患者に苦痛を与えてしまう可能性がある。同社の砥石は、安心して医療行為を受けられる体制づくりに、大きく貢献をしていると言えるだろう。
その他、工業用刃物、自動車産業機械向けの砥石など、国内外に専門性の高い製品を提供している。


③多様性を重視した組織づくり
製造業の職場といえば、男性が多いイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかし髙藏工業は、多くの女性が現場で活躍している。
「女性が工場の中にいると、場が非常に明るくなるんですよね。それに、うちで働いてくれている女性は気が回るので片付けもしてくれるおかげで、男性ばかりだった頃に比べ、工場がきれいになりました。」
20年前はほとんどが男性だったそうだが、現在は、男女比が約半々にまでなったという。
また、広報やSNSの専門スキルを持つ人材を在宅で採用している。英語の講師もオンラインで依頼し、週1回の英会話を社内で実施するなど、グローバル化に向けた研鑽を怠らない。
人不足の現在、人材の確保に頭を悩ませる経営者は多いだろう。特に製造業は、いまだに3Kのイメージが付きまとう。しかし同社は在宅ワーカーを活用し、広報やSNSに力を入れた。その結果、採用に良い影響をもたらしているという。
「若手社員が働いている記事をnoteに載せたところ、noteを見た若い世代の方から応募が来るようになったんですよ。」
そう語る髙橋社長。気になる人は、ぜひ一度同社のnoteをチェックしてみてほしい。

④1年目にも役割や権限を与える
髙藏工業は、お客様・社員・会社のすべてが幸せになることというビジョンを掲げている。短期的な売り上げ目標はコロナ禍の1.2倍、そして長期的にはグローバルニッチトップ企業としてのポジション確立を目指す。
そして同社は、人材育成にも力を入れている。全社員に「役割と責任・権限」を明確に与え、1年目からそれを実践しているのだ。
「通常であれば上司が部下に業務を指示し、部下は指示されたとおりに動きますよね。今日はこれ、明日はこれをやって欲しいと。うちも昔はそうでした。でもずっと指示を出し続けていては、5年10年経っても人材を成長させることができないと気づいたのです。」
1年目の人はここからここまで仕事を覚える、2年目の人はその仕事を教えられるようにする、3年目は改善の提案が出せるようになるなど、年次ごとの目標を設定する。もちろん、目標を立てて終わりではなく、それをフォローアップする仕組みも整えている。
「ほとんどの社会人は、1日に8時間、1週間に5日仕事をします。どうせ仕事をやるなら、その仕事を通して人としても成長したいですよね。そのためにも、社員一人ひとりが考え、創意工夫できる組織づくりを目指しています。」

⑤「素直さ」と「前向き」を大切に
一方で、採用においては課題もある。
「指示通りに動けるという人の応募はたくさんあります。しかし自分で考えて物事を進められる人は、なかなかいません。ただ、これまで伸びている人の特徴を見てみたら、やはり自分で動ける人なんですよね。」
自ら考え、仮説を立て、検証し、仕事を作っていける人材の拡充が急務だという。同社が自発的に動ける人材を求めるのには理由がある。同社には大きな夢があるからだ。
「世の中には、まだまだ我々が手を付けていない、新たな領域がたくさんあると考えています。その開発に力を入れたいと思っています。新規のアイデアをゼロからイチにして、花を開かせ、それを世界に届けたいですね。」
単に既存の商品を世界に売るだけでは終わらない。新たな技術を生み出し、国内で認められたものを海外に展開していく構想を持っているのだ。
最後に、髙橋社長が大切にしていることを伺った。
「素直さです。素直で、前向き。自分でも日頃から実践している事ですし、採用するときも、一番重視しているのはこの2つです。」
髙藏工業株式会社は、全社員がやってみたいことにどんどんチャレンジできる会社。そしてそのチャレンジを後押しする環境がここにはある。ものづくりに興味があって、世界に誇れる技術に携わり、社会に貢献してみたい人は、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

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