心温まる家庭の味を提供する「おばんざい屋 蛙家」を訪ねてみた。





地元の食材をふんだんに使用し、こだわりの詰まった丁寧な手作り料理が楽しめるお店だ。今回は、代表を務める廣岡 理彩(ひろおか りさ)さんにお話をうかがった。
- 伝統的な家庭の味で、ほっこりとした気持ちに
- 思い立ったら即行動
- 「蛙家のおばんざい」を、より多くの方に
- 何事も「なんとかなる」
①伝統的な家庭の味で、ほっこりとした気持ちに
「おばんざい」とは、京都を発祥とした日本の伝統的な家庭料理のことを指し、四季折々の旬の食材を使用し、素材本来の味を活かしたシンプルな味付けが特徴だ。
和え物・煮物、揚げびたしなど、一皿ごとに心を込めて作られた品々はどれも温かみが感じられ、食べる人をほっとさせる力がある。
はじめに、数ある料理の中から「おばんざい」を選んだ理由と、とても印象に残りやすい「蛙家(かえるいえ)」という名前の由来についてうかがった。
「私自身アレルギーが多くて、洋食は基本食べられないし、外食もあまりしないんです。そんな中、どんな料理を提供できるか考えたとき、和食が得意なこともあり、おばんざいに決めました。」
「お店の名前については、純粋に蛙が好きなのと、「蛙」と「帰る」をかけて、「実家に帰ったようなほっこりした気持ちになっていただきたい」という想いが込められています。」

②思い立ったら即行動
元々料理を作るのが好きで、お母様が経営する「珈琲庵きのした」を6年ほど前から手伝っていた廣岡さん。
お母様が経営する店舗の離れの一部を改装し、2023年4月12日に「おばんざい屋 蛙家」をオープンした。オープンに費やした準備期間は、なんとたったの2か月間だそうだ。驚異のスピードでオープンまで漕ぎつけた当時の様子をこう振り返る。
「昔から、やりたいと思ったらすぐ行動に移すタイプなんです。店舗の改装は大きなところで言うと窓を取り付けたくらいで、シンクやショーケースなど営業に必要な物はほとんど揃っていたので、比較的すぐに始められる状態ではあったんです。ですが、2か月でオープンしたことに周りはとても驚いていましたね。」
廣岡さんの決断力と行動力には脱帽だが、開業への不安や、周囲からの反対などはなかったのだろうか。
「全くなかった訳ではありませんが、やってみたいという気持ちが強かったので、決心がついたんです。ですが、私の夫は私と反対の性格で保守的なので、内心反対もあったと思いますが、私が一度決めたことは譲らないことを知っているので、応援してくれています。(笑)。」
オープン当初はテイクアウト専門店として離れで営業していたが、お母様の足の怪我をきっかけに、現在は同じ場所で営業をされているそうだ。
同じ場所でそれぞれ別のお店を営業している2人。洗い物や会計等のサポートはありつつも、基本的に「お互いの考えを尊重して口出しをしない」ことで、ちょうど良い距離感を保ちながら、うまく回せているのだと話してくれた。
③「蛙家のおばんざい」を、より多くの方に
健康的で美味しい料理を安心して食べていただけるよう、蛙家で提供する料理はすべて廣岡さんの手作りで、調味料や野菜もできるだけ無添加・無農薬のものを厳選しているのだという。
これは、「子供の口に入るものは安心できるものがいい」という、ご自身も3人の息子さんを育てる母親ならではの想いからだ。
あえて創作メニューなどの開発はせず、おばんざい一本で勝負するこだわりの強さも感じられる。
「オシャレで凝った料理を提供するお店はたくさんありますが、そんなに気張らず、ごく普通の家庭で出てくるような、いわゆる「家庭の味」を提供したいんです。おばんざい屋と謳っていても実際はトンカツや唐揚げなどの揚げ物がメインで、ちょっと小鉢が並ぶみたいなお店も多く、本当におばんざいだけのお店は少ないと思うので、それがうちの強みだと思っています。ヘルシーで、体に配慮したものを提供しているので、お客様からも好評です。」
コロナ禍で外食をする機会が減ったことで、「食」や「健康」に対する意識の変化があった方も多いのではないだろうか。
「やはりコロナ禍を経て、食の大切さに気づかれた方が多いのか、性別や年齢に関係なく、幅広い層の方に来ていただいています。ありがたいことにリピーターの方も多くて、毎日、高野豆腐を買いに通われる方もいらっしゃいます。私の想いがお客様に伝わっている事がとても嬉しいです。」
和食の需要の高まりは、店頭だけでなく、各種イベントでも感じる機会が多いのだとか。
「イベントなどに出店しているキッチンカーって結構、揚げ物などが多い印象なので、和食のお弁当を持っていくとすごく喜ばれるんです。来月出店するイベントでも、主催者からお弁当を販売してほしいと言われています。」
「今はイベントもたまにしか出れていないのと、お誘いがあれば出店するという感じなので、今後はもっと積極的に出店して、おばんざいを提供できる機会を増やしていきたいと思っています。」
と、イベントへの出店や宅配サービスの導入など、より多くの方に「蛙家」の味を楽しんもらえる機会を増やしていきたいと、意気込みを語ってくれた。
一方で、仕込みや調理、盛り付けから提供まで全ての工程を廣岡さんひとりで対応するため、提供できる数に限りがあるのが現在の課題だという。
「イベントに出店する時は前日の夜から仕込みを始めるんですが、私ひとりで作ることができる量は本当に限られていて、夜通し作業してもお弁当30個くらいが限界なんです。お客様がたくさんいらっしゃるようなイベントだと、ほぼ即完ぐらいの勢いでなくなってしまうんです。」
「今後はスタッフを増やすことも選択肢のひとつとして考えてはいるんですが、今のままでより多くの方に楽しんでいただくにはどうしたらいいだろうかと、いろいろ試行錯誤しているところです。」
また、「珈琲庵きのした」で提供している特製おせちも、廣岡さんとお母様と共作だ。素材にこだわり抜き、ひとつひとつ丁寧に仕上げた具材の味はもちろん、見た目も華やかでリピーターが続出する毎年大好評の一品だ。
「食材をくり抜いたり、花形に切ったりは全て私の担当で、煮たり、味付けは母が担当しています。毎年少し早めに通常営業を終了して、そこから必要な食材の買い出しに回って、クリスマスぐらいから準備を始めます。正直、休む暇もないですし、2人で作業しているので大変なんですが、毎年うちのお節を楽しみにしてくださっている方ばかりなので、お渡しする時の嬉しそうな笑顔を見たら疲れや苦労を全部忘れてしまうんです。本当にありがたいです。」


④何事も「なんとかなる」
オープンから約1年7か月が経過し(※2024年11月取材時点)、確かな料理の腕前と持ち前の行動力で、順調にファンを増やし続けている「おばんざい屋 蛙家」。
廣岡さん個人としての目標や夢をうかがうと、おもしろい答えが返ってきた。
「私は昔からずっと言ってるんですけど、人生の最終目標は『鉄板のある駄菓子屋さんを経営すること』なんです。今はほとんど見なくなっちゃいましたけど、私の地元にもあったんですが、鉄板を使ってスナックロールなどを提供する昔ながらの駄菓子屋さんをやりたいんです。最終目標なので、腰が曲がったおばあちゃんになるまでには叶ったらいいなと思ってます。」
取材の最後に、廣岡さんの座右の銘をうかがうと、『なんとかなる』という言葉をいただいた。
「保守的な夫には行き当たりばったりはダメだと言われますけどね(笑)。もちろん壁に当たることもあります。ですが、『諦めずに続けていけば、なんとかなる』って思いながら生きています。それに、実際なんとかなるんです。」
周囲を明るく照らしてくれるような廣岡さんのお人柄が終始感じられ、自然と笑顔や笑い声のあふれる取材となった。
春には菜の花や山菜、夏には旬の野菜を生かしたメニュー、秋には豊かな実りを感じる釜飯や冬の温かい煮物など、一宮市の四季を感じながら食事を楽しむことができるのも、蛙家ならではの魅力である。
家庭料理の温もりだけでなく、日本の食の知恵と伝統がしっかりと反映された「蛙家」のおばんざい、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
※現在、蛙家は閉店しているが廣岡さんは「不登校の子どもの居場所になるようなお店」を開店するために準備を進めているそうだ。今後の活動はインスタグラムをチェックしてみてください。

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