子連れOK、女性店主が営むこだわりのラーメン屋「結まる」を訪ねてみた。





女性が店主を務める、女性や子供連れでも気兼ねなく入れるラーメン店だ。喫茶店を改装した店内には、今日も年齢や性別を超え、さまざまな人が訪れる。夢に向かって挑戦を続ける、店主の畑 ひとみさんに話を伺ってみた。
- 夢の始まりと「結まる」の誕生
- 結まるの挑戦、「光鶏」からの独立
- 子連れも高齢者も歓迎、お客様への想い
- 結まるの未来と畑さんが描く夢
①夢の始まりと「結まる」の誕生
結まるの「結」の字は、畑さんの初孫の名前から取ったという。
「店名を考える時に、結という文字は縁起が良いですし、孫が可愛すぎるというのもあって、結の字を使うことにしました。結という字には、いろんなものが結ばれる、繋がれるという意味があります。いろんなご縁が、円のようにまるく繋がっていけばいいなと思って名付けたんです。」
ただ美味しいラーメンを提供するだけでなく、人とのつながりを大切にしたい畑さんの想いが込められた名前なのだ。
畑さんは、30代の頃から「女性が活躍できる場所をつくりたい」という夢を持っていた。しかし当時は今のようなマルシェもなく、InstagramのようなSNSもなかった。そのような中で、畑さんはカフェを借り、今のマルシェに近いイベントを実施していたのだ。
「さまざまな事情を抱えて、活躍したいけど、なかなかできない女性が多いと思うんです。女性が活躍できる場所を作れるようなお店をつくりたいというのが、私の30歳の時の夢だったんですよ。」
そのイベントには、占い、ヘアアレンジ、ネイル、似顔絵など、さまざまな特技を持つ女性が集まった。この経験が、後に畑さんが「結まる」を開業する原点となる。
その後、畑さんはお兄さんが経営するラーメン屋「光鶏(ひかりどり)」でパートとして働き始める。はじめは週数回、昼の2時半まで働いていた畑さん。しかし6年間働くうちに、お子さんは中学・高校・大学と成長する。
「子どもたちが帰ってくるのは、夜の7時か8時。今までは塾とか習い事の送り迎えで、夕方はめちゃくちゃ忙しかったんです。それが全くなくなってしまったんです。昼の2時半とかに仕事が終わったあとの時間が、ぽっかり空いてしまったんですね。お金を稼げる時間があるのに、14時半までのパートで終わってしまうのはもったいないなと感じました。」
最初は、もともとやりたかったカフェをやってみようかと考えた畑さん。しかし事業の先輩である兄に相談したところ、「せっかくラーメン屋でやってきたんだから、ラーメン屋をやれば?」 という答えが返って来た。
「最初は「私がラーメン屋なんてできない」と思ったんです、でも兄が光鶏の場所を貸してくれると言ってくれたので、「せっかくだからやってみよう」と気持ちを切り替えてチャレンジすることにしたんです。」
光鶏の定休日は水曜日。その水曜日に光鶏を間借りする形で、「結まる」が始まった。
2か月間、考えに考え抜いたラーメンをお店で提供したところ、予想以上の反響があった。間借り営業を2年続け、畑さんは独立したいと考える様になった。

②結まるの挑戦、「光鶏」からの独立
ラーメン店をやればやるほど、自分の力でもっとたくさんやってみたいという気持ちが強くなった畑さん。
まずは独立のための物件を探し始める。畑さんは、犬山での開業にこだわっていた。
「犬山は私の地元なんです。ママ友や友達も多く、みんなが来れるようなお店を犬山につくりたかったのでこの場所にこだわりました。」
そして畑さんが見つけたのが、喫茶店「シルクロード」の跡地だ。36年地元の方に愛され続けた老舗の喫茶店であり、地元の人たちにはよく知られた場所だ。「ここ、前は喫茶店だったよね」と話しかけてくるお客様もいるという。
畑さんはシルクロードのオーナーから、ガス炊飯器や調理台、鍋などを譲り受けた。
「36年も喫茶店を続けられるのは、並大抵のことではありません。そんなシルクロードさんのお店や道具を、使わせていただこうと考えました。」
店舗の内装は、女性が入りやすくなるように配慮。トイレは綺麗に改装され、広々とした空間がうれしい。また、トイレの扉を右開きから左開きに変更。これは、トイレを出たときに、座っているお客さんと目が合わないようにするためだという。
細やかな工夫で、女性が安心して来店できるお店へと生まれ変わらせたのだ。
畑さんのチャレンジは、お店を見つけて終わりではない。開店の前に創業塾に通っている。そこで学んだやり方で事業計画を作成した。商工会にも相談し、銀行から融資を受けることに成功している。
さらに、本格的にラーメンと向き合うため、ラーメンの学校にも通ったという。学校でプロのラーメン職人たちと出会った畑さん。「本当に身になった」 と学びの日々を振り返っている。
「専門的な学校に通ったことで得られた知恵や味がたくさんあります。それに出会った方からも多くのことを学ばせてもらいました。」
6年間ラーメン店で働いていた経験があり、しかも身内にラーメン店を経営している人がいる。普通の人なら、創業塾やラーメン学校で学ぶことなく、いきなり店をオープンするのではないだろうか。しかし畑さんはそうしなかった。
ラーメン学校で得た知識や人脈は、畑さんにとって大きな財産。ラーメン学校での学びが、畑さんの大きな自信へとつながったのだ。

③子連れも高齢者も歓迎、お客様への想い
畑さんは、結まるを「女性が一人でも、子供連れでも入りやすい雰囲気」 にすることにこだわっている。
「ラーメン店は男性が店主のところが多いので、女性一人では行きづらい雰囲気があると思います。また、特に子連れの女性だと、行列ができるような人気のラーメン店って、なかなか入りづらいんですよね。場違いな空気を感じてしまうんです。」
確かにラーメン店の店主が女性というのは、珍しいかもしれない。昔、厳しい師匠の元でラーメン修行するテレビ番組が人気を集めたが、師匠も弟子も男性ばかりだった。味へのこだわりゆえ、私語や香水がNGなど、厳しいルールを課すお店も少なくない。
結まるが掲げた「おひとり様、女性、主婦、子連れみんな歓迎」というコンセプトは、多くの女性客を引きつけた。小さい子に「何歳?ちゃんと食べれた?」と話しかけるなど、安心して利用できる雰囲気づくりを心がけている。
これを読んでいる方の中には、もしかしたら「女性向けのお店ってことは、量が少ないんじゃないの?」と引っかかる人がいるかもしれない。しかし安心してほしい。結まるは麺の量が多め。つけ麺200g、ラーメン150gとしっかり食べ応えがあり、充分満足できる。実際に平日のランチタイムは、作業服姿の男性でにぎわうそうだ。
看板メニューはつけ麺。周辺にはつけ麺をやっているお店がないこともあり、人気を博している。スープのポット割を提供していたりと結まるならではの、こだわりのメニューが並ぶ。
畑さんは、お客様との会話をとても大事にしている。ラーメン店といえば若い男性や中年の男性のイメージが強いかもしれないが、結まるには70代や80代の高齢者も多く訪れる。
「ゲートボール帰りのおじいさん・おばあさんが、うちに寄ってくれるんです。行列になることもあります。それに、私に会いに来てくれるお客様もいるんですよ(笑)。」
高齢の方でも入りやすいラーメン店も貴重だ。畑さんの人柄は、老若男女問わず多くのリピーターを生み出している。


④結まるの未来と畑さんが描く夢
結まるでは、現在13名のスタッフが働いている(2024年11月取材時)。高校生、大学生、主婦など年齢層もバックグラウンドもさまざまだ。
「この人手不足の時代に、こんなに集まってくれただけでも本当にありがたいですね。」
全員ラーメン店の経験がなく、みんな1からのスタートだが、誰も欠けることなくお店を支えている。
畑さんに、今後の展望を伺ってみた。
「ビジネスとしては、今、個人事業主なので、会社にしたいなっていう思いはあります。ラーメン事業なのか、カフェ事業なのか、全くべつの事業なのかはまだわかりませんが。また私はラーメン店を始める前、たくさんの人に助けてもらいました。だから私も、同じように女性のチャレンジを助けることをしたいと考えています。」
もし今後、自分も結まるをやりたいという人が出て来たら?
「もちろん、結まるのラーメンが好きで、自分もやってみたいという人がいたら、全力でバックアップしていくつもりです。」
年齢的なこともあり、将来は後継者をつくって譲ることも考えているという。
「でも体力が限界になるまでは、自分でやり続けようとは思っています。」
バイタリティあふれる畑さん。最後に、座右の銘を伺ってみた。
「人生楽しんだもの勝ちです。どんなに大変でも、自分の人生だから楽しまないと。私もいろいろあったけど、今が一番楽しいですね。」
沖縄の方言で「ゆいまーる」という言葉がある。「ゆい(結い)」と「まーる(廻る)」が組み合わさった言葉で、「助け合い」「共同作業」「いっしょにがんばろう」という意味だ。地域の人との関わりを大切にし、互いに助け合う。結まるからは、このゆいまーるの精神が感じられる。
畑さんの「女性が輝ける場所を提供したい」という想いは、これからも「結まる」を舞台に、さまざまな形で実現されていくだろう。ラーメン好きな人も、子ども連れで気兼ねなく食事を楽しみたい人も、将来の夢に悩んでいる人も、ぜひ結まるを訪れてみてほしい。

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