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“あたたかいおやつ時間”を届ける「KASUN no OYATU(かぁさんのおやつ)」を訪ねてみた。

“あたたかいおやつ時間”を届ける「KASUN no OYATU(かぁさんのおやつ)」を訪ねてみた。
JESSE <small>ジェシー</small>
JESSE ジェシー
この間食べたおやつが、ほっとするおやつでさ〜本当に最高だったんだ〜
MEI <small>メイ</small>
MEI メイ
わかる!疲れたときに甘いもの食べると生き返るよね♪
JESSE <small>ジェシー</small>
JESSE ジェシー
だから僕も、人をホッとさせるおやつになろうと思って、全身にチョコ塗ってみた!
MEI <small>メイ</small>
MEI メイ
・・・全く意味が分からない・・・
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名古屋市西区にある「KASUN no OYATU(かぁさんのおやつ)」をご存知だろうか。
米粉を使ったグルテンフリーのおやつやドリンクを提供し、”バランス"と"温もり"を大切にしたお店だ。店主の髙橋 加世子(たかはし かよこ)さんが生まれ持った繊細な味覚と、お子様やご家族との体験を通じて辿り着いたのが、この場所だった。今回は、お店に込められた想いや背景を伺った。
今回のツムギポイント
  • 店名に込められた”温かい”想い
  • ”人と違う”からこそ辿り着けた場所
  • 隠れ家のような対話の場
  • 知る人ぞ知る、だからこそ
  • ツールが変わっても、想いは変わらない
  • “自分軸”で選び、動く

①店名に込められた”温かい”想い

 

2023年10月にオープンした「KASUN no OYATU」。

 

「この店名は自分の名前が“かよこ”なこと、母親が作る愛情たっぷりな温かいおやつ、それから太陽のように温かく包み込むという願いを込めています。」

 

ここまででお気付きの読書もいるだろうが、「KASAN」ではなく「KASUN」の表記になっているのは、その想いからなのだ。

 

店名の「KASUN no OYATU(かぁさんのおやつ)」には、店主・髙橋さんの母親のような強く深い愛情や温かさを感じてもらいたいという想いが込められている。

 

「私は、お母さんって太陽みたいな存在だと思っています。自分の中でもそんな存在でいる事をモットーとしてあるんです。だから自分も、みんなに太陽のような暖かさを感じてもらえる、そんな場所を作れたらいいなと思ったんです。」

 

この場所がただのおやつ屋さんではなく、包み込むようなあたたかさに満ちている理由が、店名にも表れていた。

 

②”人と違う”からこそ辿り着けた場所

 

「私は昔から、味覚に敏感だったんです。“これは食べられる、これはちょっと違う”って、味の細かい部分がわかる子だったんです。」

 

それはまるで“味覚の絶対音感”。

 

例えば、見た目は同じ「生クリーム」でも、それが”動物性”なのか”植物性”なのかで食べれる食べられないが分かれるのだとか。

 

幼少期は、みんなが「美味しい」と言って食べている物の理由が理解できなかったそうだ。ご自身が周りと”違う”と悩まれた時期もあった。

 

“人と違う事が悪い事”と考えてしまう時期もあり、無理に合わせようとした時もあったのだ。

 

「当時は何でこれが美味しいの?と感じることもありましたが、”目立っちゃいけない”という気持ちもあり一生懸命周りに合わせてきましたね。」

 

そう当時を振り返る髙橋さん。しかし、時が経ちご主人と出会い、それが自分にとっての個性であり良い部分なんだと受け入れてもらい考えも変わっていったのだそう。その後、愛娘が産まれ驚く事があったのだとか。

 

「実は娘にもその感覚が引き継がれていて、旅行の時などに、市販のベビーフードに頼る事があったんですが、娘が食べないで口から出したんです。なぜだろう?と思って成分表を見ると気になる項目があったんです。なので、自分でも食べてみたら「あぁなるほど」って娘が食べなかった理由がわかりました。」

 

驚く事に、髙橋さんの感覚が、しっかりと娘さんにも受け継がれていたのだ。

 

「今も娘のお弁当に、お店で買ったミートボールを入れたら“これいつものと違う!いつものが良い”って言われます(笑)。」

 

ご自身の幼少期と比べると、現代は自分の主張を言いやすい環境になったと髙橋さん。

 

「多様性を認めようという考えが広まって来ているので、自分の意見を発信し易くなって来たと感じます。だからこそ同じような感覚の人を含めて自分たちが「美味しい」と思う物をシェアできる空間を作りたい・出会いたいという気持ちが強くありました。情報ではなく、感覚で“美味しい”と思えるものを届けたくて。」

 

米粉やグルテンフリーと出会い、「おやつ」というツールを通じて、多様な味覚や体質を持つ人と共有したいという想いが芽生えた。

 

③隠れ家のような対話の場

 

「KASUN no OYATU(かぁさんのおやつ)」は、アパートの一室を改装している。外から中が見えるわけでもなく、正直少し入りづらさを感じる人もいるという。

 

それでも一度足を運べば、「知ってる人だけの秘密基地」のような親しみが湧く。

 

「私とのお話を楽しみに来ていただけるお客様もいらっしゃるんです。意外と人と約束して会うって、ハードルが高い時ありませんか?でも、誰かと話す事でスッキリする時もあるし、そういう時に寄れる場所でありたいなと思ってます。」

 

おやつに対してのこだわりはもちろんだが、人とコミュニケーションを取れる”空間”を大切にされているのだ。

 

また、グルテンフリーや米粉といった要素もあるが、それを強くアピールする気はないと髙橋さんは言う。

 

「無添加だからいいとか、グルテンフリーを強くすすめたいとかじゃないんです。私も添加物を全く摂れないわけじゃありません。時にはカップラーメンを食べる事もあります。ただ、毎日食べるのは体に良く無いかなとは思います。絶対に添加物は摂らないってしてしまうと疲れてしまいますし、その辺は何事もバランスだと思います。」

 

この発言に筆者は驚いた。勝手なイメージだが、自然食を大切にされる方は添加物や体によく無いとされている物は徹底的に避ける物だと思っていたからだ。

 

髙橋さんはそうではなく、自分の体と正直に向き合い欲する物を適切に”バランス良く”との考えなのだ。

 

“愛情をもって作られた背景が見えるものを大切にしたい”。

 

髙橋さんは、このようにも語ってくれた。

 

④知る人ぞ知る、だからこそ

 

現在は新規のご来店もあるが、リピーターが多いのだとか。

 

「お客様には、3階まで階段で上がってくるのがハードルってよく言われます。中が見えないのもあって、最初は入りづらいみたいですね。」

 

ただ、その敷居の高さが逆に特別感を生み、再訪率の高さにつながっている側面もある。

 

「もっと気軽に来てもらえる工夫が必要だなって、ずっと考えているところです。」

 

今後はクレープなどその場で食べられるメニューを増やし、イートイン利用を促すような形も検討しているという。

 

その考えの根源にも、やはりいらっしゃる方とのコミュニケーションを大切にしたいという髙橋さんの想いが詰まっている。

 

⑤ツールが変わっても、想いは変わらない

 

今後の展望について伺ってみた。

 

「この場所でこのまま続けていけるのか、何かを変える必要があるのか、最近すごく考えてるんです。」

 

おやつという形が今の自分にとっての“ツール”だけれど、それに縛られずに「人と人がつながる場所をどう作っていけるか」を模索している髙橋さん。

 

「経営者としてどうこうじゃなくて、自分が“楽しく長く続けられるか”を一番に考えたいんです。」

 

水曜日の営業日に“誰かがふらっと話しに来られる空間”を作りたい、そんな構想もある。

 

髙橋さんは、おやつの先にある“人と人との時間”を何より大切にしている。

 

⑥“自分軸”で選び、動く

 

「私の中で大事にしてるのは、自分軸です。」

 

何かを選ぶとき、それが自分の望みなのかをしっかり確認する。誰かの期待や評価に左右されるのではなく、自分の感覚に従う。その姿勢が、お店にもおやつにも滲んでいる。

 

いつも行動や考え方の軸には自分がある。

 

娘さんにも「自分の人生を自分で選ぶこと」の大切さを伝えているという。

 

「誰かの意見で決めた事で成功しても自分の自信が育たないんじゃないかと思います。だから、自分で決めて行動することの大切さを今から伝えています。それに、子供たちは失敗しても責められない、受け入れてもらえる環境があるので今こそどんどん挑戦してどんどん失敗して学んで言って欲しいと伝えています。」

 

髙橋さんの「KASUN no OYATU」は、そうした自分らしさと誠実さが育んだお店だ。

 

かぁさんのような優しさと、太陽のような温もりを届けたい――

 

髙橋さんの人生と感覚をそのまま表した「KASUN no OYATU」は、ただのグルテンフリーのおやつ屋さんではなく、共感対話が交わる小さな止まり木だった。

 

訪れた人がほっと心を緩め、少し元気になって帰っていく。今日もこの隠れ家のような場所には、そんな時間が流れている。

 

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