常連客の笑いが絶えない喫茶店「はなこまち珈琲」を訪ねてみた。





手作りのフルーツサンドが人気を集める、地域密着型のアットホームなカフェだが、開店に行き着くまでには、たくさんの苦労があった。店主である小澤 麻里子(おざわ まりこ)さんに、開店までの道のり、お店の強み、そして未来の展望などを伺った。
- 花言葉は感謝、かすみ草の看板が目印
- ご主人との別れを乗り越え店舗兼自宅を購入
- 古い喫茶店をDIY
- 看板商品にフルーツサンドを選んだ理由
- 信じて頑張れば不可能なことはない
①花言葉は感謝、かすみ草の看板が目印
2023年5月8日にオープンした、はなこまち珈琲。和の雰囲気が感じられる名前が印象に残る。店名の由来は、二人のお子様の名前から来ているという。ひらがなにすることで、どなたでもわかりやすく、かつ親しみやすいものになっている。
看板のデザインは、イラストレーターを目指すお子様の同級生が手掛けたもの。かすみ草をモチーフとしており、花言葉である幸福や感謝を表現している。
店内は広々としており、気兼ねなくゆったり使えるのがうれしい。15名~20名で使用できる団体客向けのスペースも用意されており、地域のサークル活動やPTAの集まりなど、シーンに応じて幅広く利用できる。
現在は、小澤さんの娘さんやご友人も含めた6名のスタッフで運営している。特に娘さんは現在、お店の主力として活躍しており、頼れる存在だ。(2024年11月取材時)
「娘の友だちは、みんな小学生くらいの頃から知っています。うちにいつも遊びに来てくれた子達が、今、アルバイトに来てくれているんです。お店の名前も、その子たちと一緒に考えたんですよ。」
小さな頃から知っている子と働くというのは感慨深いものがあるのだろうと感じた。
はなこまち珈琲は営業中は常連客の笑い声が絶えない。一宮モーニングプロジェクトの加盟店としても知られ、地域の喫茶店文化を支える存在となっているのだ。


②ご主人との別れを乗り越え店舗兼自宅を購入
はなこまち珈琲がオープンするまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。小澤さんは卒業後、美容師として活躍。出産後は子育てに専念し、専業主婦として家庭を支えていた。
しかしご主人との死別によって、小澤さんの生活は一変する。
名古屋から地元・一宮に戻った小澤さんは、ご両親の助けを借りながら、子育てと仕事の両立の道を模索した。
「当時、子供たちはまだ小さかったので、子供との時間を取る為に土日のどちらかはお休みが欲しかったんです。美容師の仕事は土日が一番忙しいので、中々休めないんです。なので、美容師への復帰は難しいなと思ったんです。」
そして小澤さんは、飲食の世界に飛び込んだ。
「当時は手当たり次第、アルバイトをしていました。掛け持ちしたりもしました。飲食は初めてだったので毎日が新鮮でした。」
飲食店で働く楽しさを知った小澤さんは、カフェやレストランなどで約10年の経験を積む。
「本当に仕事がすごく楽しかったんです。美容師もそうですが、私は接客業が好きなんだなと実感しました。」
そして、いつかは自分の店を持ちたいと夢を描くようになった。
なぜ、喫茶店だったのだろうか?
「常連さんが毎日通ってくれるような、日常に密着しているタイプのお店が好きなんです。あとは、もともと珈琲が好きだったからです。私が勤めていた喫茶店は、カウンターがあって、お喋りに来てるお客様が結構多かったんです。美容師の時もそうですけど、人と繋がれる職業がいいなと思っていました。」
そして夢に向けて、コツコツと開業資金を貯めてきたのだ。
「夫が亡くなる前は、家もあったし、何もかもが揃っていました。でも、夫が亡くなりそれらをすべて失ってしまい、何もない状態になってしまったんです。ですが、私は自力ですべてを取り戻そうと思いました。なので、自分で家を買うことを一つの目標にして頑張ってきました。」
そして12年後、小澤さんは持ち前のガッツで、ついに念願の店舗兼マイホームを手に入れたのだ。

③古い喫茶店をDIY
小澤さんが出会った物件は、かつて老夫婦が経営していた喫茶店だった。オーナーの急逝により、壁や床、家具などすべて手つかず。長らく買い手がつかない状態だった。店舗と自宅を兼ねられる場所を探していた小澤さんは、この物件に決めた。
「私は、もともとDIYが趣味だったんです。昔から中古の一軒家を買って、リフォームして住むっていうのが夢だったんです。なのでこの物件と出逢ってとってもワクワクしました。」
なるべく自分たちでリノベーションすることを選んだ小澤さん。ご自身で床を剥がしたり、壁を塗り替えたり、水回りを一新したりと大変だったのだそう。
「DIYは好きですが、やはりプロではないのでとても大変でした。最初は一人でやっていたのですが、親戚や友人を通じて大工さんや塗装屋さんなど、プロの方が集まってくれました。毎日一緒に作業していたので、最後の方は友達みたいに仲良くなっていました。」
心強いサポーターを得た小澤さんは、自身の理想のレトロモダンなお店を作り上げたのだ。小澤さんの人柄が、よくわかるエピソードではないだろうか。リフォーム物件のモデルケースとして、はなこまち珈琲を訪れるDIYファンもいるそうだ。

④看板商品にフルーツサンドを選んだ理由
はなこまち珈琲の強みは、小澤さんの人柄と、地域の人々との繋がりを大切にする姿勢だ。
客層の8割は地元の方で、特に年配の常連客が多いという。ゆっくりとリラックスできる店内、そして小澤さんとのおしゃべりを楽しみにしているお客様も多い。
「毎日同じ人が同じ時間に来て、同じものを食べて、また明日ねって言って帰る。そんなお客様がたくさん来てくださるんです。なので、2日来ないと体調を崩してなかと心配になってしまいます。」
メニュー構成も、常連客を意識して作られている。毎日通う人が飽きないよう、日替わりトーストやサンドイッチを提供している。一方で、若い世代向けに厚焼きたまごサンドなどのインスタ映えするメニューも用意している。看板メニューであるフルーツサンドは、季節の新鮮なフルーツをふんだんに使用。いちごの赤、みかんのオレンジ、シャインマスカットの黄緑と見た目もとても華やかだ。
ヨーグルトクリームを使用していることで、さっぱりとした味わいを実現。価格も、食後のデザートなどで気軽に追加注文しやすいよう、200円台に抑えている。
驚きなのが、小澤さんがフルーツサンドを主力商品として選んだもう一つの理由だ。一人で店舗を運営をすることを想定し、仕込みで9割方完成できる効率的な商品として考案したのだという。
「うちのフルーツサンドは、フルーツがみっちりと入っています。一人でも勝負していこうと考えたときにできたメニューです。」
このように、はなこまち珈琲は長い飲食店経験で培った小澤さんならではの経営哲学が、お店の細部まで行き届いているのだ。

⑤信じて頑張れば不可能なことはない
今後の展望について、小澤さんは2つの方向性を描いている。
1つは、高齢者施設との連携。
「喫茶店が好きだけど、施設に入って通えなくなったお客様に、また来ていただきたいんです。」
そんな想いから、店舗にはデイサービスなどの送迎車両を停められるスペースを確保。施設単位での利用を積極的に受け入れていきたいと考えているそうだ。
「前に勤めていた喫茶店は、デイサービスや福祉施設の方が、マイクロバスなどで5人ぐらい、利用者さんを連れてきてくださって、楽しそうにお茶したりしていました。うちでもそういうことをやりたいなと思っています。」
そしてもう一つが、キッチンカーとの協業だ。ランチの需要に応えつつ、常連客との会話を大切にしたいと考える小澤さん。外部のキッチンカーを誘致し、店内でイートインできるスペースを提供することを計画している。
「ランチはないの?って言ってくださるお客様は多いのですが、ランチをやり始めると、どうしてもお客様とお話する時間が取れなくなってしまいます。ですので、キッチンカーに来てもらって、うちのお店では珈琲とか飲み物を頼んでもらって、イートインできるようにしたらお客様とお話もできるし、ランチも提供できるんじゃないかと考えました。」
キッチンカー側にも、天候にも左右されずに出店できるメリットがある。小澤さんと話したくて足を運ぶお客様のことを考えた、小澤さんならではのユニークな戦略だ。
「じわじわと常連さんが増えていくお店にしたい」という小澤さんの言葉通り、はなこまち珈琲は地域に根付いた形で成長を続けている。今後は、さらにもう一店舗、リノベーションして開店したいという新たな夢も抱いている。
「はなこまち珈琲のノウハウを活かして、もう1軒手掛けたい。リノベーションするときに仲良くなったメンバーで、もう1軒つくりたいね、という話をよくしています。」
小澤さんご自身は、カウンターでお客様とおしゃべりするおばあちゃんになりたいのだそう。
「年配の方から『素敵ね』と言っていただけるお店にしたいです。私ももうすぐ50歳、お客様といっしょに年齢を重ねていけるようなお店にしていきたいですね。」
そんな小澤さんの座右の銘は、「If you believe in yourself, Anything is possible(信じて頑張れば不可能なことはない)。
「最初、何もかも失った私はお店を出すのは、不可能だと思ったんです。何度も心が折れそうになりました。でも信じ続けていたら夢が叶いました。実は夢が叶ったらこの言葉を壁に書いてオープンしようと思っていたんです。」
そしてその言葉どおり、逆境にくじけることなく、夢を実現させた小澤さん。あなたもぜひ小澤さんのポジティブさやパワーをもらいに、はなこまち珈琲を訪れてみてはいかがだろうか。

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